卒業生インタビュー・柏木 光昭さん


2019年度卒業生インタビュー、4回目は、林研究室所属の柏木 光昭さんです。2月に発表した論文のプレスリリースが「注目の研究」として約1ヶ月間筑波大学公式Webサイトのトップページを飾ったほか、博士課程での研究実績が評価され、「人間総合科学研究科長表彰」も受けた柏木さん。この4月からは博士研究員として、引き続き林研究室で研究に取り組みます。

—睡眠の基礎研究に関心を持ったきっかけは?

 学部の時は筑波大学医学群の医療科学類で勉強していました。基本的には臨床検査技師を目指す課程です。しかし、僕が学部3年生の時に基礎研究に重点を置いたコース(現 国際医療科学主専攻)が新設されて、僕もそこに入ることにしたんです。もともと研究にも興味があったので、ちょうど良いタイミングでした。所属研究室を決めるため、関心のある研究室をいくつか訪問するうちに、今も未解明な部分が多く残されている睡眠という分野に魅力を感じるようになりました。特に、レム睡眠の機能についてはほとんど何もわかっていない、という林さんのお話がとても印象的で、自分もその謎に取り組んでみたいと思い、幸運にも林研究室に受け入れていただきました。ちょうど、ノンレム睡眠とレム睡眠の切り替えの制御に重要な脳の神経細胞を発見して、林さんの論文がScience誌に掲載される少し前のことです。研究室が立ち上がったばかりだったので、ほぼ何もない部屋からのスタートでした。最初の仕事として、使えそうなものを資材置き場にみんなで漁りに行ったことも、今となっては良い思い出です。苦労もありましたが、これからどんどん面白いことがわかってきそうだという期待でいっぱいだったことを覚えています。

—林研究室で柏木さんはどんな研究をしていましたか?

 学部3年生から大学院修了までの7年間、林研究室でいろいろな研究に取り組みましたが、マウスの脳の中で睡眠と覚醒を切り替えるスイッチとして働く神経細胞を見つけた時は「うまくいった」という手応えを感じました。また、2月にプレスリリースを出していただいた研究も成果の一つです。ノンレム睡眠とレム睡眠のバランスを調節する脳の回路と神経細胞を見つけた、という内容で、Current Biology誌に掲載されました。

今は脳内の特定の神経細胞を活性化することで、レム睡眠を増やすことができる遺伝子改変マウスの解析を中心に取り組んでいます。ただ、その神経細胞が本当にレム睡眠の制御に重要かどうかを確かめるには、まだまださらなる検証が必要です。さまざまなアプローチからの実験を重ねて、自分の仮説をより強固なものにしていきたいと思っています。

—ご自身の進路についてはどのように考えていましたか?

学部を卒業した時点では、将来について何か明確な目標を持っていたわけではありませんでした。好きな研究をもっとやりたくて修士課程に進んで、興味深い実験結果をさらに深掘りして、自分の手でまとめあげたいと思って博士課程に進んで…と、その時その時で目の前にあることを追究していたら、現在に至った、という感じです。臨床検査技師の勉強をしている時に身につけた「目の前のことをコツコツと、丁寧にやる」ということを、研究生活の中で実践し続けた結果とも言えるかもしれません。学生の頃は林さんに研究の枠組みを作ってもらって、その中で自分なりの工夫をしてやってきましたが、研究員として働くこれからは、自分で方針を決めるところからできるようになりたいです。

—これから研究者を目指す学生さんへのアドバイスをお願いします。

僕もまだ研究者として駆け出しですし、周囲の先輩方からネガティブな話を聞いて不安に思うこともあります。実際、アカデミックならではの厳しさもあるとは思いますが、もしそれに負けないくらい研究が好きなのであれば、自分を信じて挑戦してみてもよいのではないでしょうか。しっかりと自分の意思を持って挑戦し取り組んだのであれば、結果が他人と比較してどうこうではなく、その過程で得られる経験自体が自分独自の貴重な財産になると思います。また、僕はあまり思い詰めるタイプではありませんでしたが、自信をなくして落ち込んでしまった時は、自分が今やるべきことに集中しつつ、「本当に研究が自分のやりたいことなのか」など、自分を見つめ直す機会と前向きに捉えて乗り越えて欲しいと思います。あとは、適度に息抜きできる時間もとると良いかもしれません。僕は時々、仲の良い友人と飲みに行って気分転換をします。自分とは違う分野で頑張っている人と会って話をすると、僕にとっては研究が全てじゃないんだな、と視野の広さを取り戻せるように思います。

 

目の前のことを、コツコツと、丁寧に—。柏木さんの研究に対する真摯な姿勢と、実直な人柄がにじみ出るようなインタビューでした。これからも日々の積み重ねを大切に、「レム睡眠の謎の解明」という大きな目標に挑んでください!ご卒業、おめでとうございます!

 

林研究室HP:http://hayashi.wpi-iiis.tsukuba.ac.jp