卒業生インタビュー・鈴木 稚寛さん


2019年度卒業生インタビューの2人目は、佐藤研究室所属の鈴木 稚寛さんです。学部で看護学を学んだ後、修士課程の2年間でヒトを対象とした睡眠研究に取り組んだ鈴木さんは、4月から同じHuman Sleep Labの阿部研究室でPSG(終夜睡眠ポリグラフ検査)を専門とする技術職員として働き始めます。

—ヒトを対象とした睡眠研究に関心を持ったきっかけは?

 私、眠るのが好きなんです。小さい頃からよく寝る子どもで、中高生の時は土日になると13〜14時間寝ていました。しかし、私の母は4時間睡眠でも十分というタイプだったので、血の繋がった家族なのにどうしてこんなに違うのか、睡眠って面白いなと感じていました。睡眠研究に取り組んでみたいと思うようになったのは、学部生の時の看護実習がきっかけです。担当した患者さんの中に、自宅とは異なる環境や、手術前後の不安や痛みなどが原因で眠れなくなってしまう方が多くいて、何とか看護の力で患者さんの睡眠を改善できないか、という問題意識を持つようになったんです。

—修士課程ではどんな研究をしていましたか?

 睡眠時無呼吸症候群の方や、いびきをかきやすい方だと、仰向けよりも横向きに寝る方が重力の影響を受けて気道が狭くなりにくいので、症状が緩和されやすいと言われています。修士論文では、健康な成人の方を対象に、寝具の影響でどれくらい横向き寝が増えるのか、という基礎的な研究を行いました。実験では体圧分散性の高級マットレスと一般的なマットレスの2種類を用意し、さらに抱き枕の使用有無で結果を比較しました。健康な方を対象にしていたためか、明確に有意差があるとまでは言えなかったのですが、抱き枕を使うと横向きが増えるという傾向が見られました。睡眠時無呼吸の方やいびきをかきやすい方を対象に実験すれば、横向き寝の頻度や睡眠の質にもより大きな違いが見られるかもしれません。寝具による睡眠へのアプローチは、薬物療法などと違って医師の介入を必要とせず、誰もが自分の意志で始められるものです。自分の意志と行動で睡眠を改善できるという、患者さんや一般の方の意識変容に結びつく結果で、看護の考え方に通じる点も多くあると思います。

—修士課程2年間で一番大きな学びは何でしたか?

このような基礎実験はこれまで全く経験がなかったので、何もかもが新しい学びでした。特に、PSGの脳波解析を修士1年生から学び始めたのですが、これが本当に奥深くて、面白いんです。一応解析のための標準的なマニュアルはあるのですが、一口に睡眠時の脳波といっても個人差が大きく、画一的ではありません。被験者さんによっては、睡眠段階の判定がとても難しいことがあって、研究室の先生方に教えていただいたり、時には一緒に議論したりながら解析を進めました。マニュアルはきちんと押さえつつ、一人一人の被験者さんの個性を捉えて適切に脳波を読み解いていくのは難しいですが非常にやりがいがあります。PSGをもっと深めたくて、阿部研究室の技術職員として働きながら経験を積む決心をしました。

—今後の抱負を教えてください。

社会人1年目の技術職員として、専門領域に足を踏み入れることになるので、いろいろな方の技術を見て、吸収して、これまで以上にPSGと真剣に向き合っていきたいと思います。RPSGT (Registered Polysomnographic Technologist® )という専門資格もあるので、その取得に向けた勉強も続けたいです。自分で取り組みたい具体的な研究テーマが定まらなくて、悩んだ末に博士課程への進学を見送ったのですが、技術職員として研究に加わる中で自分の興味も芽生えてくるかもしれません。そういう可能性の広がりも意識しながら睡眠研究に取り組んでいきたいと思っています。

 

2019年4月に5床の睡眠実験室を備えた「Human Sleep Lab」が完成したことについて、「設備が充実して、被験者の方に本当に快適に過ごしていただけていると思う」と被験者さん目線で嬉しそうに語ってくれた鈴木さん。これからも看護を学ぶ中で培った患者さん目線での対応力やコミュニケーション能力を生かしながら、PSGのエキスパートを目指してくださいね。ご卒業、おめでとうございます!

 

佐藤研究室HP:http://satoh.wpi-iiis.tsukuba.ac.jp

阿部研究室HP:http://www.u.tsukuba.ac.jp/~abe.takashi.gp/