論文紹介:慢性的なストレスはマウスの睡眠にどう影響する?


IIISの大学院生 安垣 進之助さん、林 悠准教授らの研究成果が10月14日付のFrontiers in Neuroscience誌に掲載されました。

Effects of 3 Weeks of Water Immersion and Restraint Stress on Sleep in Mice
(3週間の拘束水浸ストレスがマウスの睡眠に及ぼす影響)
https://www.frontiersin.org/article/10.3389/fnins.2019.01072

慢性的なストレスが心身に悪影響を及ぼすことは、私たちも日常の経験から何となく感じ取っているはず。では、睡眠にもたらす影響とは具体的にどんなものなのでしょうか?それをマウスを使って調べたのが今回の研究です。

マウスをストレスフルな状況に置くために、従来の研究では「社会的敗北ストレス」といって、実験対象のマウスを気性の荒い別のマウスと一緒のケージに入れて、攻撃されたり、威嚇されたりの嫌な体験をさせる…という方法がよく用いられていました。しかし、睡眠の記録を考えた場合、途中でマウスがけがをしたり、脳波を測定する電極が傷んでしまったりして、最大でも10日程度しか継続できないという問題がありました。そこで、研究チームは今回「拘束水浸ストレス」という方法を採用。狭い筒状の容器にマウスを固定して、溺れない程度の深さの水に一定時間浸します。これにより3週間という長期にわたってストレス状況下にあるマウスの睡眠を記録することができるようになりました。

実験の結果、3週間の拘束水浸ストレスにさらされたマウスでは睡眠覚醒にさまざまな影響が見られました。特に興味深い変化が、レム睡眠の増加や深いノンレム睡眠に特徴的な脳波の減少で、これらはうつ病患者さんに見られる睡眠の変化とも一致します。また、レム睡眠の増加はマウスが通常よく活動する時間帯である暗期でみられ、1週目で顕著である一方、2週目以降では鈍化するなど、ストレスにさらされた初期と後期ではそれぞれ応答のしかたが異なることもわかりました。

「本研究の成果は、睡眠が慢性ストレスによりどのような影響を受けるか、また、その睡眠の変化が行動的・生理的変化をどのように誘発するか、といったテーマに迫っていく上で重要な土台となるのはもちろんのこと、睡眠の生理的作用の一端を解明していく上でも大きな礎となるのではないかと期待しています」と安垣さん。

心と身体、そして眠りはつながっている―そのつながりの形を探る安垣さんたちの今後の研究にどうぞご期待ください!