林悠准教授インタビュー
「睡眠とはこのためにあったのか」と、誰もが納得する答えをだしていきたい -前編-


IIISの若手PI(Principal Investigator)として活躍する林悠准教授が、平成29年度文部科学省大臣表彰・若手科学者賞を受賞しました。林さんは、2015年に、それまでほとんど明らかにされていなかったレム睡眠の意義を証明したことを科学誌「Science」にて発表するなど、目覚ましい成果を残しています。どんな研究をしているのか、詳しくお話を聞きました。

ー どんな研究をしているんですか?

林:睡眠の意義を解明して、医療の応用につなげることを大目標にかかげています。

ー 睡眠の意義の解明から医療の応用へ。とてつもなく大きな目標ですね。そもそも、睡眠の意義というのは、今どこまでわかっているんですか?

林:実は、まだほとんどわかっていません。過去の研究で、ラットを2〜3週間断眠させると、体重が激減し、体温が下がるなど身体の調子がどんどん悪くなって、最終的に死にいたることが報告されています。この結果から睡眠は生命を維持する上で絶対に不可欠なものであると言えるのですが、なぜそうなってしまうのか、その理由は全然わかっていなのです。

ー 睡眠はほとんどが未知の状態なんですね。林さんはどんなアプローチで睡眠の謎を解き明かそうとしているんですか?

林:僕は、レム睡眠の機能を調べることで睡眠の意義を解き明かそうとしています。
ご存知のように、睡眠は、大きく分けると、ノンレム睡眠とレム睡眠に分けられます。ノンレム睡眠については、記憶形成やホルモン分泌と深く関わっていることがわかっているのですが、レム睡眠の機能についてはほとんどわかっていません。

ー レム睡眠は完全にブラックボックスの状態なのですね。

林:さらに言うと、レム睡眠はとても面白い状態で、寝ているにも関わらず、脳のある部位はものすごくアクティブに動いていて、逆に筋肉は弛緩しています。心拍や呼吸も乱れてとても休息とは言えないような状態なんです。何か特別な意味があるのではないかと考えています。進化を考えたときにも、ノンレム睡眠は広く保存されているけど、レム睡眠は人間のように高次の脳を持っている動物にしか見られません。人間は、なぜこうも複雑な脳を持っているのかを解き明かすことにもつながるかもしれません。

ー 睡眠を解く鍵になるだけでなく、脳の進化の理由も解き明かせるかもしれない。それは人類にとってとても興味深いテーマですね。レム睡眠の機能を調べるためにどのような実験をしているのですか?

林:レム睡眠の機能を知るためには、マウスのレム睡眠を制御することによって、身体にどのような影響があるかを調べるというアプローチが非常に有効であると期待しております。私たちの研究室では、マウスの脳内でレム睡眠を操る部位を見つけだし、マウスのレム睡眠を減らしたり増やしたりすることに成功しました。そのマウスを調べてみると、レム睡眠がノンレム睡眠に影響することがわかったのです。

ー レム睡眠が、ノンレム睡眠に影響する・・・。どういうことでしょう?

林:先ほど述べたとおり、ノンレム睡眠は記憶形成やホルモン分泌などと深い関わりがあります。そのノンレム睡眠中には、デルタ波と呼ばれる脳波が検出されますが、デルタ波が高いと記憶学習が増強されたり、成長ホルモンが多く分泌されたりすることが知られています。今回の研究で、レム睡眠を増やすとノンレム睡眠中のデルタ波が高まり、レム睡眠を減らすとデルタ波が弱まることがわかりました。

ー レム睡眠が、ノンレム睡眠の質というのを決めているのですね。

林:そうですね。ただ、他にもたくさん機能があるかもしれません。今回は数時間単位でレム睡眠を操作して睡眠への影響を調べましたが、次は数週間から数か月の長期間レム睡眠を操作したときに、行動や学習、脳の老化などにどのような影響があるかを調べていきたいと思っています。

レム睡眠の機能が解き明かされるのは、まさにこれからが本番という感じですね。林さんが今後どのような研究成果をだしていくのか楽しみです。ここまでは林さんの研究内容をお伝えしてきましたが、どんな研究者なのか気になりませんか。その素顔は、「恐縮です・・・」といつも遠慮がちに話す謙虚な方。子どもの頃のお話から、睡眠の研究者になるまでのプライベートなお話をたくさん聞いてきました。次回をお楽しみに。

「睡眠とはこのためにあったのか」と、誰もが納得する答えをだしていきたい -後編-

林研究室:http://hayashi.wpi-iiis.tsukuba.ac.jp/

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